5月6日
『不毛地帯』に引き続き山崎豊子氏の『二つの祖国』を読了。
大傑作。
本書のストーリーは第二次世界大戦から東京裁判までの背景で、
アメリカ市民権がある日系2世の物語である。
一人の主人公を軸に壮大な物語を展開させる山崎氏の能力が
遺憾なく発揮されている。
今作は特に強く主人公たちの心の内面にスポットが当たっており、
読むに従い戦争という極限状態における主人公の運命に
読者も苦悩や憤りを感じぜずにはいられなくなる。
ストーリーは大きく3部に分かれており、
開戦に伴う収容所時代、語学教官としての従軍時代、
翻訳モニタとしての東京裁判時代と
一貫して主人公及び周りの日系達のアイデンティティの所在が主題となっている。
母なる祖国アメリカ、父なる祖国日本の狭間で揺れ動く日系人たちの心情が
戦争の中で悲劇を生んでいく。
私は祖国を持つことができるのか?
アイデンティティーよりももっと肉感的な『祖国から愛されているか?』
という問いに真摯に向き合い両方の祖国のために
持てる限りの力を尽くす主人公の行為の正義は
どの時代、どの単位の組織においても普遍的なものだと思う。
ただ、そこには苦渋の決断があり、自分の中の正義を試される。
単行本1冊丸ごと扱われている東京裁判のくだりは
その圧倒的な臨場感と一体何が裁かれたのか?
という深い洞察にショックを受ける。
国際法上の戦争という行為を裁く裁判ではなく、
戦勝国が一方的に敗戦国を裁いた裁判だったのか。
2年半に及ぶ裁判で4000冊という速記記録が残っているとのことで、
この膨大な歴史的資料を整理し、
山崎氏は圧倒的な筆量で2年半を物語を進めていく。
通訳モニターの視点から描写された裁判は言葉の解釈へ重きを置いているので
場面が極めて克明で主人公の正義を求める思考シーンが重なり
読者も苦悩に引きずり込まれる。
夢中になりながら読み進めていく中である種使命のようなものを覚える。
たった60年前。
多大な犠牲を払った過去を我々は生かすことができているのか?
原因があり結果があるのであればあの戦争を起こらしめた原因や状況が
まだ現在世界で起こっていないか、
起こりうるのであれば自分たちが何ができるのか。
考えるきっかけになった。
後半、主人公が東京裁判に良心の判事として出席していた
インドのパル判事から言葉を受けるシーンがある。
「この裁判に打ちのめされず、人間の善意を信じ、不正と闘い、少しでも是正することが、 われわれ生き残った者の義務です」
文化も風習も違う国の人たちと向かい合うために必要な姿勢とミッションに
自分自身が持つ正義を照らし合わせ
忠実であるこのとの大切さを発見する機会を本書は与えてくれた。
準備に2年間、連載に3年間かかっているこの長編小説を書くきっかけとして
山崎氏は戦時の日系に対する米国の扱いに強い憤りにあったという。
社会的歴史的に陽の当たらない暗部にスポットを当て、
多くの人に関心を与えるその問題意識のバイタリティーに畏敬の念を感じずにはいられない。
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